有機ELと液晶パネルはなにが違うのか。その仕組みと特徴をまとめてみました。
2021年5月11日
近年スマートフォンの画面パーツによく採用されている 「有機EL」
なぜ近年採用されるようになったのか。これまでの液晶パネルとの違いは。
そんな様々な疑問に対する答えをまとめてみました!
目次
- 1,液晶パネルの仕組み
2、有機ELの仕組み
3、「液晶パネル・有機EL」のメリット、デメリット
4、どっちがいいの?液晶パネルと有機EL
5、有機ELは割れやすい!?
1,液晶パネルの仕組み
液晶パネルの「液晶」というのは、物質の状態の一つで、固体と液体の間の中間的な状態のことを差します。
この「液晶」と呼ばれる物質は、電圧をかけているときと、いないときで分子の向きが変わります。
この液晶分子は、その向きによって工学的な性質が異なるという特徴があるので、この性質を活かして、光の透過率をコントロールしています。
液晶パネルは、この「液晶の層」を電極で挟み、電流を流した時に液晶に生じる状態の変化を利用して、画面を表示させています。
スマートフォンなどに使用される「液晶パネル」は、この液晶分子の他に、「偏光板」や、「カラーフィルター」などの層を重ね、バックライトをあてることで表示しています。
また、画素数の高い液晶パネルなどは、一つの画素ごとに、電圧を正確にコントロールするパネル「TFT」を使用して、細かく綺麗な画面の表示を可能としています。
2、有機ELの仕組み
有機ELは、その名の通り、有機物を電気を使って発光させる仕組みになります。
液晶は「カラーフィルター」「バックライト」というように、ディスプレイの表示に様々なパーツが必要ですが、有機ELでは、有機物自体が「色」も「光」も担っている為、使用するパーツが少なくて済みます。
基本的に、電子エネルギーを使って光を出す、という一点においては液晶パネルも有機ELも同じ技術が使用されています。
しかし、有機ELではこの光を出す仕組みにおいて、有機化合物を使用しており、その種類や組み合わせで様々な色を表現しているのです。
3、「液晶パネル・有機EL」のメリット、デメリット
ここでは、主に有機ELと液晶パネルのメリットデメリットを紹介していきます。
有機ELと液晶パネルのそれぞれのメリット、デメリットは以下のようになります。
こうしてみると、有機ELはかなりの優れものにも言えますが、電化製品に採用すると考えると「高価」「パーツの劣化が早い」という組み合わせは、少し心配も覚えます。
有機ELによって黒の色がくっきり!
液晶パネルでは、バックライトからの光を利用して色を表現していたため、黒を表現しているときでもバックライトは当たっており、黒を綺麗に表現することが出来ないでいました。
ですが、有機ELはバックライトが必要ないため、そういった心配もありません。
有機ELでは、それぞれの色をくっきりと表現できるため、コントラストの綺麗なとても見やすい映像表現が可能なのです。
また、液晶は映像を表現する際に、液晶分子を移動させる必要がありますが、有機ELはその必要がないため、スピードのある表現も可能になるのです。
では、このようなメリット、デメリットを踏まえた上で、どちらの方がパーツとして優れているのか、解説していきましょう。
4、どっちがいいの?液晶パネルと有機EL
有機ELと液晶パネルはどっちがいいの?という問いに関しては、厳密にどちらがいいとは言い切れません。
使用の用途や、目的によってそれぞれの性質に合わせたものを選んで使うのが理想的です。
例えば、何年も使用するような家電だったり、使用頻度の多い家電であれば、劣化が早く、価格の高い有機ELは不向きで、液晶パネルの方が使用に向いています。
しかし、スマートフォンのような持ち歩くものだったり、買い換えのペースが早いものであれば、有機ELの方が適しています。
テレビなどであれば、「一日中家にいて使用頻度が多い場合」は有機ELだとすぐに劣化してしまって壊れてしまうので、液晶パネルのものが適しています。
逆に、「使用頻度はそこまでないけれど、映画などを見て高グラフィックにこだわりたい場合」には有機ELのパネルがいいのではないでしょうか。
メリット、デメリットをしっかりと見極め、自分の使用用途に合ったものを購入しましょう。
スマートフォンの有機EL化
近年のスマートフォンは、多くのものが有機ELのパネルを採用しています。
これは一体なぜでしょうか。
スマートフォンが生活の一部となり、手放せなくなった現代、スマートフォンには高いグラフィックと、軽さが求められるようになってきました。
有機ELは液晶パネルに比べ、パネル自体の厚さは10分の1ほど。その分だけ、スマホ本体も軽くなります。
また、スマートフォンで動画を見たり、作業をすることが増えてきたため、スマートフォンは高グラフィックのものが好まれるようになっているのです。
こうした理由から、近年のスマートフォンの多くは有機ELを採用しています。
もちろん有機ELのパーツは「高価になってしまう」、「長時間同じ画面にしていると焼き付きが発生してしまう」等といったデメリットも存在しますが、これらに関しては徐々に改善されています。
有機ELのものでもある程度安い物が生産されるようになり、焼き付きに関しては、ダークモードなどで対策が取れるようになってきました。
デメリットに対し、メリットがかなり大きいので、今後有機ELを使用したスマートフォンは増えてくるでしょう。
5、有機ELは割れやすい!?
これはあまり一般的には知られていませんが、修理業者の目線から、有機ELは液晶パネルより割れやすいです。
と言うより、割れたときにより大きな被害になりやすいです。
液晶パネルのお客様は、多くの場合、割れてしまっても「ガラスが割れてしまって」や「液晶に線が入ってしまう」などのケースが多いですが、
有機ELの場合だと、一切映らなくなってしまったり、大きなにじみが発生してしまうケースが多々あります。
なぜこんな風に被害が大きくなってしまうのでしょうか。
高性能が故のもろさ
前述した通り、有機ELは画面を構成するパーツが液晶パネルより少なくて済みます。
その上、目的として軽さ、薄さを求めている為、画面のガラスもそこまで厚くはありません。
その為、結果として画面を守るものが少なくなってしまいます。
すると、もし落下などで画面に衝撃が走ったとき、画面の発光源部分に損傷が入ってしまったり、カラーを表現する機能に損傷を与えてしまう可能性が高いのです。
最近のスマートフォンであれば、iPhoneなどは特に画面の表面のガラスを強固なものにしている為、そういった割れに対する対策がとられるようになってきました。
機種によっては、価格の安さを武器としていて、有機ELを使いつつもあまりガラスが強固でない物もありますが、全体的に見れば、画面割れによる被害が減ってきたように感じます。
ですが、油断は禁物です。
表面のガラスから、画面を表示する部分までの距離が近いのは変わりません。
また、もし割れてしまった場合、交換料金が高くなってしまいます。
画面をしっかりと保護して、画面割れの対策はこれまで以上に取る必要が有りそうです。
まとめ
ここまで有機ELと液晶パネルの違いを記述していきましたが、いかがだったでしょうか。
有機ELはかなりの優れものですが、まだまだ改善が望めるものになります。
しかし、徐々に問題点と思われていたところも、技術の進歩により解消されてきております。
もうあと数年もすれば、有機ELはもう少し楽に手に入れられるようになり、電子機器がどんどんコンパクトになってるこの世の中で様々な電子機器に採用されることでしょう。
液晶パネルも、液晶パネルにしかない長所があります。
今後は、そういった特徴を理解したうえで、スマホやテレビなど選択する必要がありそうです。